mixiニュースでつっこみたかったことなのだけれど、ニュースについて日記書くと人が来るっぽいことに思い当たりとりあえずこっちに書くことにしてみました。

記事

(毎日新聞 - 10月17日 03:11)

 奈良県大淀町大淀病院で今年8月、分べん中に意識不明に陥った妊婦に対し、受け入れを打診された18病院が拒否し、妊婦は6時間後にようやく約60キロ離れた国立循環器病センター(大阪府吹田市)に収容されたことが分かった。脳内出血と帝王切開の手術をほぼ同時に受け男児を出産したが、妊婦は約1週間後に死亡した。遺族は「意識不明になってから長時間放置され、死亡につながった」と態勢の不備や病院の対応を批判。大淀病院側は「できるだけのことはやった」としている。

 妊婦は同県五条市に住んでいた高崎実香さん(32)。遺族や病院関係者によると、出産予定日を過ぎた妊娠41週の8月7日午前、大淀病院に入院した。8日午前0時ごろ、頭痛を訴えて約15分後に意識不明に陥った。

 産科担当医は急変から約1時間45分後、同県内で危険度の高い母子の治療や搬送先を照会する拠点の同県立医科大学付属病院(橿原市)に受け入れを打診したが、同病院は「母体治療のベッドが満床」と断った。

 その後、同病院産科当直医が午前2時半ごろ、もう一つの拠点施設である県立奈良病院奈良市)に受け入れを要請。しかし奈良病院も新生児の集中治療病床の満床を理由に、応じなかった。

 医大病院は、当直医4人のうち2人が通常勤務をしながら大阪府を中心に電話で搬送先を探したがなかなか決まらず、午前4時半ごろになって19カ所目の国立循環器病センターに決まったという。高崎さんは約1時間かけて救急車で運ばれ、同センターに午前6時ごろ到着。同センターで脳内出血と診断され、緊急手術と帝王切開を実施、男児を出産した。高崎さんは同月16日に死亡した。

 大淀病院はこれまでに2度、高崎さんの遺族に状況を説明した。それによると、産科担当医は入院後に陣痛促進剤を投与。容体急変の後、妊娠中毒症の妊婦が分べん中にけいれんを起こす「子癇(しかん)発作」と判断し、けいれんを和らげる薬を投与した。この日当直の内科医が脳に異状が起きた疑いを指摘し、CT(コンピューター断層撮影)の必要性を主張したが、産科医は受け入れなかったという。

 緊急治療が必要な母子について、厚生労働省は来年度中に都道府県単位で総合周産期母子医療センターを指定するよう通知したが、奈良など8県が未整備で、母体の県外搬送が常態化している。

 大淀病院の原育史院長は「脳内出血の疑いも検討したが、もし出血が判明してもうちでは対応しようがなく、診断と治療を対応可能な病院に依頼して、受け入れ連絡を待っていた」と話した。

 一方、高崎さんの遺族は「大淀病院は、総合病院として脳外科を備えながら専門医に連絡すら取っていない。適切な処置ができていれば助かったはずだ」と話している。【林由紀子、青木絵美

http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=103253&media_id=2


とりあえずこのニュースに対するmixi内の人達の反応を見ると、パターンが三つくらいのタイプに分かれている気がします。

A・道徳的・感情的観点から(他人事だと思いつつ)憤慨してみせる方。

B・自分自身親であったりそれに近い方の「人ごととは思えない」という感想。

C・病院の現実などからこの事件のことを分析してみる方。

どの人達も酷く正しいことしか言っていないと思います。

ただ、私には毎日新聞の書き方はAの人達を変に煽ろうとしているように思えました。

<受け入れを打診された18病院が拒否
拒否って言葉を「ただ断っただけじゃん?」と読み取らせようとしたり(病院の受け容れ拒否って「その症例に対し適切な治療ができる設備がないから」っていう理由でやるんです)、

<CT(コンピューター断層撮影)の必要性を主張したが、産科医は受け入れなかったという。
妊婦にCT=放射線照射っていうリスク高いことをやって、あげくその場での治療方法も殆どないなら、むしろ早く緊急搬送しないとどうしようもないっていうのが産科医的判断だと思います。
ってか無事に生まれてもそれで障害が母子のどちらかに残ったりでもしたらまたマスコミに叩かれるわけで。
CTは医師的にも母子的にもリスク高すぎじゃないですか?
で、こういうことをさも「必要だった」かのように言い立てて、

<一方、高崎さんの遺族は「大淀病院は、総合病院として脳外科を備えながら専門医に連絡すら取っていない。適切な処置ができていれば助かったはずだ」と話している。

最後にこれですよ。
大切な人を失った遺族の気持ちはいつも「〜たら」「〜れば」です。自分にもよくわかります。
でも、「適切な処置ができていれば助かった」というのはどんなに切実な思いでも、ただの素人の思いになってしまいます。
本当に助かったかどうか? 元々大きなリスクが伴う出産の場面において、妊娠四十一週、妊娠中毒症の疑い、陣痛促進剤の投与、子癇(しかん)発作、あげく脳内出血が重なっている状態です。
出産に伴うリスクが激減して、「安全なもの」と見なされているのは大きな間違いだと思います。
元々生まれてくることができなかったかもしれない子供たちが何人も助けられていると思います。自分も多分昭和初期あたりだったら生まれられずに死んでいたような人間です。

とにかく、大淀病院で「適切な処置」はできなかった、
どうやっても「適切な処置」が出来る状態が作れなかった、これらが厳しすぎますが現実です。
それを、医師の問題として片づけていいんでしょうか?

本来医療システムの問題として論じられるべきであったり、倫理観の問題として論じられるべきであったりするところのことを、感情に任せてあっさりと思考停止するのはちょっと自分としては納得がいきません。これらの課題こそある程度冷静に、慎重に考えていかないとまずいところですよね……

とりあえず以上の引用からは、毎日新聞の、「医療ミスがあったよー」と直接書かずに、でもそう読み取らせようとする意図が見え見えです。

医療費削減しろ医者減らせ! という国政の流れを肯定しつつ、そのしわ寄せにより救えなかった人々の命の責任を、全て医師だけになすりつけて、国民をマインドコントロールしておくのがメディアの仕事だ、ってことなんでしょうか? じゃ俺は、毎日はもうとらねー。

つづくかも。