静電気で指がしびれた瞬間になんでこの世のすべてを嫌いになりそうなのか
触れることについて痛みが伴うとかそういうことがきっと嫌なのだろうか
ざらざらした舌同士を絡ませあって傷を舐め合えば癒えるはずのトラウマも癒えず
そのまま三秒後には消えてしまう炭酸飲料の泡のような恋愛感情をもてあますのか


喋ったり言葉を口に出したりする必要が偶然なかった数日間のあとで声が出なくなったことがある
喉を締め付けるような痛みが発声を妨げるとき それはきっと喜びの叫びなのではないかと思った
意思の疎通がなければならないと決めた人間はたぶんいなくて意思の疎通をしたいと望んだ人間はたぶん誰もかもだった
どうしようもないくらいに痛いということがどうしようもないくらいに何かを求めるということなのかと分かった気になる


それならどうして、静電気で指がしびれた瞬間になんでこの世のすべてを嫌いになりそうなのか
触れることについて痛みが伴うとかそういうことはきっと当たり前のことなのだろうに
けれどもふれようとして拒まれたときの痛みは求める痛みとはちがう感じをもたらすのだから
そのまま三秒後には消えてしまう炭酸飲料の泡のような恋愛感情に変えて癒えないそれをやりすごす